ブランド事典

デンツ Dents

ヒストリー

名工ジョン・デントが興した手袋の最高峰。

デンツは世界最高級手袋およびその他のアクセサリーを丹念に作り上げて参りました。
優れた製法技術を代々受け継ぎ、その職人気質と時代を超越したスタイルは、230年以上大切に培われています。

デンツは、1777年に英国の美しい聖堂のある都市ウースターにて、設立者ジョン・デントが初めて一組の手袋をカッティングし自社の名のもと創業しました。
革の鑑別と裁断技術において天才的な才能を持ったデンツが作り出す手袋は、手にしていることを忘れてしまうほどのフィット感を持つことから『シークレットフィット』と呼ばれ、名声を博しました。

デンツの熟練した手袋カッター(裁断士)になるためには通常7年、マスターカッター(親方裁断士)の下で年奉公します。
その年季奉公は現在少し短くなりましたが、資格あるカッターになるには、長年の経験と長期の訓練期間を経て、熟練技術を得る為に必要不可欠な鋭い目と器用な手を養います。
もちろんカッティングだけではありません。
一組の手袋を作る工程は長く、殆ど手作業で行う32もの違った工程を経て完成されます。
ジョン・デントの息子2人もまた15歳の時より7年間、徒弟の年季を勤め、後にパートナーシップによって優れた職人の王朝時代を形成し、その人達がデンツの名を後に世に轟かせることになりました。

デンツは、19世紀から20世紀にかけて高級手袋及びアクセサリーの大手輸出会社として、ニューヨーク、パリ、グルノーブル、ブリュッセル、ライプチヒ、プラハ、シドニー、ナポリにある子会社を通じて高級手袋を丹念に作り上げ、各国へ販売していました。
この時期、ファッション志向の婦人や紳士達が、あらゆる社交の場で手袋を着用することが非常に大切なことだったことにも由来します。

ジョン・デント・ジュニア ウィリアム・デント

連綿と受け継がれる伝統を守り続ける。

現在デンツ社の工場は、ウィルトシャー州ウォーミンスターという美しい郊外の町に位置し、そこには歴史的な手袋の道具や資料が収められたデンツ博物館もあります。
そこに収められた多くのコレクションの中には、18世紀及び19世紀初頭の手袋の数々、デンツ社が1953年に女王陛下ご即位の際にご用達したエリザベス2世の載冠式用手袋など特別な展示品を見ることができます。

デンツ社とその職人達は、何世代にも亘りジョン・デントが提唱した技法と心使いの伝統を忠実に守り、非常に繊細な縫い目の美しい手袋を作り続けています。
今までもそうだったように、21世紀となった今日でも職人達によって受け継がれながら、デンツは素晴らしい革手袋を丹精込めて伝統の技法で作り上げています。
その歴史、そして品質と職人技能に対する不変的なこだわりを大変誇りに思っています。
これが手袋の名工、創業者ジョン・デントの不朽の遺産といえましょう。

デンツ社が1953年女王陛下ご即位の際に
ご用達したエリザベス2世の載冠式用手袋は、
ウィルトシャー州ウォーミンスターのデンツ博物館に収められています。

マテリアル

最高級皮革を活かす技量と探究心

微妙な変化や濃淡のデリケートな色合い、また時折、傷がついていたり、天然の皮の持つ特有の性質故、デンツ社の革バイヤーや選別士の技術が試されます。
どの革をとっても2つとして同じものはないからです。
スタイル毎に完璧な革を選別するには、個々の革片をひとつずつ丹念に選び抜き、検査し、等級をつけなくてはなりません。
この選別士の技術と知識を持ち合わせた機械はどこを探しても存在しません。
革選別士の経験に裏打ちされた眼識によって、あらゆる種類の革から、そのきめ、感触、厚み、強さを識別します。
あらゆる特定の手袋を作る為には、それに完璧なまでに適した革一片を選別する以前に、これら全ての性質が決定されていなければなりません。
この飽くなき完璧さへの探究心、品質の追求がデンツの手袋に「秘密のフィット感」と心地よさを与えてくれます。
このことがまさに折り紙付の品質たる所以です。
表面に使用される皮革
ペッカリー グローブ
南米の熱帯雨林に生息する野生の猪豚。
銀面に3つの連なった剛毛の痕の特徴ある毛穴があり、厚みがあるにも拘わらず柔軟な繊維組織を持っています。
革の中でも水汚れに強く、硬くなり難くい性質を持ち合わせています。
使い始めは非常に美しい光沢があり、長く愛用していくとまた違った味わい、柔らかさを持つデンツを代表する高級皮革です。
ディアスキン グローブ
ディアスキンとは鹿革のことをいい、デンツでは光沢のある銀面層を持つ最高級の北米産の鹿革が使われます。
数ある皮革材料の中でも非常に丈夫でありながら、とてもきめが細かく柔らかいという特徴を持っています。
グローブの素材に最も適したレザーの一つです。
ヘアシープ グローブ
エジプト周辺の砂漠地帯に生息する特殊な羊の皮革。
非常に薄く柔らかくなめすことが出来、肌に吸い付くように滑らかでシルキーな感触をもち、その使い心地は最高です。
デンツのヘアシープ グローブのほとんどは、世界有数の高品質レザーを製作する英国の名門ピタード社のレザーを使用しています。

使い心地を大きく左右するライニング

手袋のライニング(裏地)は非常に重要で、ライニングの素材及びその中に挿入される芯が手袋の最終的な外観に影響を与えます。
手袋のライニング素材は各種あり、その中でも今日一番人気の高いのがシルクとカシミアです。
デンツ手袋のライニング素材だけを使った一組の手袋を作り、それを伝統的な方法で手袋内に挿入し、手袋の中にもうひとつ手袋が入る形にします。
このように2重にする事でよりフィット感が増し、はめ心地の良い手袋が出来上がります。
ライニング(裏地)の素材
シルク
独特の光沢と滑らかな肌触りが特徴のシルク。
冬に暖かく夏に涼しい、皮膚に最も近い繊維として素晴らしい柔らかさを持ちます。
シルクの主成分タンパク質セリシンには、抗菌性、調湿性、吸臭性、紫外線カットの効果なども持ち合わせています。
ライニングとして使用することで、より手に吸いつくような一体感を感じることができるでしょう。
カシミア
カシミール地方に生息するとても細く長い繊維をもち、毛足の長い毛を選別すると1頭からわずか200gほどしか採取できない貴重な素材カシミア。
この貴重な素材で編上げられたライニングは、とても贅沢な温かみと軽さを持ち合わせています。
デンツ社は、カシミア製品で定評のあるジョンストンズ社で特注したカシミア・ライニングを使用しています。
ノーライニング
『表面の素材をより堪能したい』というお客様にお薦めするライニングが無いもの。
直に素材に触れて頂き、繊細な指先に伝わる感触を体感することができます。
お手入れがしやすくなるので、末永くご愛用したい方にもお薦めです。

プロダクト

完璧なフィット感を生み出すディテール

このデンツの手袋の特徴であるフィット感は、マスターカッター(親方裁断士)の技術と経験によるところが大きく、長年の訓練修行から生まれたカッターの確かな目と、革を注意深くシェーピング(形作り)し伸ばしていくことが最終のフィット感に影響します。
その感触は「手袋をしたまま新聞をめくることができる」といわれるほどです。
高品質の手袋用革は全て自然の伸びがあり、型紙にはその必要な伸びに応じて調整が加えられ、完璧にフィットする手袋が出来上がります。
今日使われている型紙は、1839年まで遡り、20の異なったサイズがあります。

ここでは、ハンドメイドの商品を例にデンツの細部をご説明します。

1. 指先は十字に縫い上げられています。
2. 今日職人たちの入念で、いとおしむような心使いと誇りで、手袋ひとくみ一組にそのひと針ずつが縫い込まれ、どこにもない時代を超えた究極のアクセサリーとなる手袋に仕上げられています。
手袋は手で熟練したお針子がガイド無しでそのまま縫製していきます。
この職人技術の伝統が、畏敬にも値する技術とその創業者であるジョン・デンツの職人気質を受け継ぎ、どこまでも貫くデンツ社の姿勢に息づいています。
3. 手縫いの手袋だけに見つかる小さな菱形のマチ。
水かきの部分に宛がわれ、指の自在な動きを妨げることなく動かすことができます。
4. 手袋の甲を装飾する「ボインツ」といわれる3列目の縫い目。
人差し指から薬指までの腱の動きを助ける役目もあります。
伝統的でクラシックな縫製としてもっとも一般的ですが、以前は手袋の甲の部分や袖口を刺繍で飾ることも珍しくありませんでした。
5. 手袋の縫い合わせ目が外に出ている「ブリックシーム」法は、皮の重量が重いものに使用され、「インシーム」法は裏側から縫い、表側に正しく返すことで手袋の縫い目が表面に表れない縫い合わせです。
シルクなどの薄いもので使用されています。
6. 手の出し入れを補助するベントは、装飾の無いPalm vent、ボタンで止めるstud closure、開きの調節が可能なstrap&rollerなど各種あります。

ケア

使用方法
段階を分けて装着、着脱をすることをお薦めします。
装着する時は、各指の穴を確認してから装着し、着脱するときは、各指頭(もしくは爪)の部分を撫でるように少しずらした後に、親指を除く4本の指部分を持って抜き取ると、負担をかけることなく着脱することができます。

靴などと同じように、毎日同じものを使わず2双以上の手袋を交互に使うと長持ちします。
適度に休ませてご使用ください。

保管方法
泥やほこりの汚れは、乾いた布でふくか、ブラシをかけて取り除いて下さい。
付着がひどい時は、信頼のおける革専門の業者にお尋ねください。

風通しの良い日陰の場所で保管してください。

長期間保管する場合は、陰干にして防湿、防虫対応をして密封して保管して下さい。梅雨時期には一度取り出して陰干し、湿気をぬくことが必要です。

使用上の注意
※革手袋の洗濯はさけてください。
※革手袋は汚さない・傷めない・水に濡らさないことが基本です。
水に濡らすと色落ちしたり、硬くなることがあります。
もし起こってしまったら
革手袋が雨で濡れてしまった場合は、できるだけ早く布で水気を吸い取り、風通しの良い所で陰干して下さい。
3~5日かけてゆっくり乾かし、完全に乾いてから汚れをとります。
熱を与えたり、日光に当てて乾かすと、型崩れやヒビ割れの原因になります。カビの最高の治療は早期発見。表革はからぶきをして落として下さい。
縫目や細かい所は、入念に歯ブラシで除きます。
ただし革の組織の中まで変色している場合には跡は消えません。
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