ファッション用語事典

カシミア Cashmere

カシミアとは、インド北部に位置する、ヒマラヤ山麓カシミール地方原産の カシミア山羊の毛のことを指す。
この地方の山羊は寒さから身を護るため、冬の間、喉のあたりから腹にかけて長い粗毛が生え、さらにその下にシルクのような細くて柔らかな5センチから8センチほどの柔毛が被い、体を保護している。
春が来ると、山羊たちは自分の体を岩や樹々に擦りつけ、被っていた毛を削ぎ落とす。
その柔らかな毛のみを採取し、ショールを編んだことが、カシミアニットの歴史の第一歩である。
今から実に500年も前のことだ。

カシミア山羊の寿命は、平均すると7~8年である。
しかも出生率が低く、子山羊は年に1頭しか産まれない為、家畜・飼育が非常に困難な動物である。
その上、1頭から採れるカシミアの量は僅か100gであり、綿毛が採れるのは3~5歳までの間と、非常に短期間である。
更に採毛する時期は年1回、カシミア山羊の毛が生え変わる直前の5月に採毛しないと、品質も量も低下してしまう。
こうしたカシミアの採毛には、糸にするまでの歩留りも悪いためにコストは上昇。
元々のカシミア自体の希少価値と相まって、値段は青天井となる。

カシミアは柔らかく滑りがあり、絹のような光沢感を持ち、保温力に優れる。
15~16ミクロンと非常に細く、一頭から僅か150~250gしか採れず、一枚のセーターを作るのにでさえ3頭分の毛が必要となる。
カシミアはその質によって、特級から4級までの5段階に分けられるが、世界最高級カシミアメーカーとして名高いバランタイン(BALLANTYNE)やブルネロ・クチネリは、自社の製品に特級の最高級カシミアしか用いない。
最高級カシミアは硬質なので、着始めはハードな印象を受けるが、洗濯を繰り返すほどに滑らかな肌触になる。

カシミアは上品さ、エレガントを代表するアイテムであったが、近年では製品洗いや製品染めなどの加工を加えることで、ドレススタイルに限らず、カジュアルスタイルにも使える、気軽に使えるアイテムとなっている。

カシミア/Cashmere