キーマンインタビュー

インタビュー ピーティー・ゼロウーノ PT01

PT01創始者 マリオ・ステファノ・マラン氏 インタビュー

こんにちは、今日は宜しくお願いします。
今回、日本にはどのくらい滞在する予定ですか?


約一週間です。
大体いつも土曜日には日本に着いて、その次の週の土曜日にはイタリアへ帰ります。
今回はイレギュラーで、このあとソウル、中国、マニラ(フィリピン)に行きます。
とても忙しいです。

韓国でもPT01は人気ですか?


そうですね、韓国は非常に日本のマーケットを意識しています。
例えば、韓国のファッション業界ではプラダやグッチ、ロベルト・カヴァッリなどビッグメゾン(マリオさん曰くモノブランド)が中心です。
20年前に日本がそうであったようにですね。
最近になってスペシャリティストア(マリオさん曰くマルチブランドショップ)、日本でいうセレクトショップのような形態のお店が、サントーニやマニファットゥーレクラバッテなど専門的な色合いの強いブランドを取り扱うようになっています。
韓国での私達の顧客は主に2つあり、個人オーナーが店を構える路面店と、大きなショッピングモールに店を構えるショップです。
韓国での私達のビジネスはまだ始まったばかりです。
中国やロシアなどもそうです。
両国のファッションも、まだまだビックメゾン中心です。
中国では力を持った国営企業が、イタリアのエディ・モネッティのような有名セレクトショップを参考に、新規の店を続々とオープンさせています。

現在の韓国や中国の経済力は日本を上回っていると感じますか?


いや、そうは思いませんね。
たとえ、グローバル経済全体が凋落しているとしても、それは新しい経済が生まれている変化の兆しと言えるでしょう。
例えば、日本にはたくさんの中国人や韓国人が買い物に来ますよね?
そうして日本のショップや人々をチェックして、また自国に持ち帰って参考にするでしょう。

COVER社(PT01の会社名)ではOEMは行っていますか?


いいえ、全くやっていませんし、今後も計画していません。
現在私達は1シーズンに約12万本、年間で約30万本近いパンツを生産しています。
私達の生産能力は非常に大きいと思いますが、今非常に好調ですから他のブランドの生産を行なっている余裕がありません。
それに私達には私達のやり方があるので、他のブランドの制約を受けたくないと思っています。

パンツ以外のアイテムを手掛ける予定はありますか?

いいえ、パンツ以外は全くやるつもりはありません。
パンツこそ私のファーストプライオリティだからです。
我々COVER社はパンツ専業の会社です。
私はトータルルックはノンセンスだと思っています。
あなたが生きている、或いは仕事をしているということは何かのスペシャリストな筈です。
例えば歯医者とか自動車のエンジニアとか、なんでもいいですけれど、とにかくスペシャリストとは1つの事に特化している人の事を指します。
私はパンツのスペシャリストだと自負しています。
だから私はパンツにしか興味がありませんし、パンツのみを作るのが私の哲学であるともいえます。
確かに多くの周囲の人から「マリオ、何故シャツや靴を作らないんだ?」と言われます。でもポロを買いたければポロラルフローレンがあるでしょう?
今日私の履いている靴はカーシューです。
ドライビングシューズにおいては最も優れたブランドです。
ドライビングシューズを作りたければ、ピッティに出展している靴メーカーに頼んで靴を作ってもらえばいいのです(笑)。

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今日着ているブランドは?

ジャケットはサルトリオ、シャツはラルフローレン、パンツはPT05、タイはアスコットです。
私はタイを1,000本持っていて、小紋やドット、ワンポイント、無地などありますが、全て色はネイビーです。
ベルトはアルチザン、靴下はソッツィです。
靴下はいつもコットン素材です。

アスコット社のネクタイは結び目がほどけにくく、いいネクタイですね。
実は当店でもこの秋冬から発売開始予定です。

では次回からSTILE(現在のGLOBER)で買いますね。
STILEはどこでお店をやっているのですか?

STILEはインターネットのみです。
日本のビジネスマンは平日は夜遅くまで仕事をし、週末は家族との時間やアクティビティで忙しく、なかなか買い物に行く時間がないのです。
だから時間の制約のないインターネットで提供しています。

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なるほど。
残念ながらイタリアではそれほどインターネットビジネスやEコマースは発達していません。
Eメールやプレゼンテーションなどは勿論パソコンを使います。

ところで今日着ているシャツは素敵ですね。
どこのブランド?

日本のブランドで、エイキーンというブランドです。


胸ポケットの刺繍などオリジナリティがあって好きです。
そのシャツ、イタリアでもウケますよ。
私はオリジナルなもの、他には無いデザインのものを買ったり作ったりするのが好きです。

ありがとう。デザイナーに伝えます。
PT01はどういった経緯で始めたのですか?


私は以前インコテックスで働いていました。
もう20年以上も昔の話ですが。
その後ボリオリにも所属していました。
私が入った当初のボリオリは全くの無名で、他ブランドのOEMを引き受けている小さなファクトリーに過ぎませんでした。
名前もボリオリとは名乗っていませんでした。
そこで私はボリオリのブランディング向上の為、イタリアらしいボリオリという名前を大きく打ち出す事にしました。
その後ボリオリ社は日本のマーケットでの成功もあり、大きく成長しました。

それからブルネロ・クチネリに1年在籍しました。
クチネリでは主に韓国や香港などの新興国での新規店の立ち上げに携わっていました。
そういった国々で6店舗出店することに成功しました。

その次が現在のCOVER社です。
その時私が思った事は男性のパンツのマーケットは非常につまらないということ。
インコテックスが頂点にあり、そして他ブランドは全くインコテックスに及びません。
ですからどこのショップでもインコテックスを扱っていますが、それと同時にどのブランドもインコテックスをすぐにコピーします。
それではいけないと思ったんです。

ファッションには情熱が必要です。
商品を手に取った時、或いは目にした時に「ワオ!凄いなこれどこのパンツだろう?」
そういう類の感動が必要だと思いました。

他の商品では何よりもコストが優先されます。
スーパーで水を買う時には1ユーロ高いか安いかで、どの商品を選ぶか決めるでしょう?
でもファッションは違います。
まるで心に火が着火するようなときめきが必要なのです。

COVER社も当時はインコテックスの全く足元にも及びませんでした。

私達はパンタローネ(パンツ専業ブランド)であり、トリノに本拠地を構えます。
ですからブランドロゴはPTで始まり、パンツ業界のナンバーワンになりたいと思いましたし、パンツ業界で誰もが成しえなかった事をしたいオンリーワンになりたいと思いました。
だから、01を付けようと。
そうしてPT01という名前にしたのです。
次に考えた事はエンドカスタマーである顧客のことです。
どうしたら私達のパンツを手に取ってもらえるだろうかと。
日本やイタリアを始め世界中にカスタマーはいます。
Facebookには「PT01 Supporters」という熱狂的な支持者のコミュニティもあります。
こうした人々を熱狂させようと思ったんです。
初見では「なんだこのパンツ?おかしいんじゃないか?」と思われるでしょう。
ですが、その次の瞬間には手にとって買ってもらえるようなデザインです。
パンツのライナーにはあらゆるデザインを施し、シルエットは斬新かつモダンなパンツ、それがPT01です。
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男性のメンズパンツは未だに保守的でしょうか?

いいえ、かつてはそうでしたが。
かつて日本からイタリアに電話する事は非常に難しかったです。
ですが、いまや携帯電話で1本です。
同様に全ては変わりました。
パンツも細く、よりデザイン性が豊かになっています。
COVER社は60年間もクラシックでトラディショナルなパンツを作り続けてきました。
私が加入してからのCOVER社のパンツはよりクリエイティブで、楽しいものになったと確信しています。
そのクラシックと新しさのミックスされた感じが私は非常に好きなのです。