ファッション用語事典

Pコート Pcoat

Pコートとは、厚手のウール地のダブルブレステッドで腰丈のオーバーコートを指す。
その特徴は、幅の広いワイドなラペルのダブルブレステッド仕立て、錨をあしらった大きな金属製のボタンと手を温めるために垂直に切り込みが入った両ポケットが添え付けられている。
Pコートの源流とも言えるPコートとよく似たコートは2つある。
1つは、戦時中、英国将校や海軍下士官トップランクの海曹長のみが着用を許されていた「ブリッジコート」と呼ばれるもので、腿丈まで着丈があるのが特徴的。
もう1つを「リーファージャケット」と言い、基本的なデザインはPコートと同じだが、肩にエポレットと前身頃にゴールドボタンを備え、士官クラスの人間のみ着用を許されていた。

伝統的なオリジナルのPコートは、30オンスの非常に厚手のメルトン生地を使っているが、現在のPコートは22~32オンスが多い。
Pコートやダッフル・コートなど、海軍兵士達愛用のミリタリーアウターに用いられることの多いメルトン生地の特徴は、生地を仕上げる際に、毛羽を強く圧縮することで、フェルトのように目が詰まる。
そうすることで、水を弾く撥水性と反発力を持ち、丈夫で、保温性に富む生地となる。
また質感も重厚感があり、それに反するかのように柔らかな肌触りで、実に優雅な雰囲気が漂う。

Pコートは一世紀以上に渡る永き間、そのオーセンティックなデザインやシルエットを殆ど変えることなく、男女問わず様々な年代層に支持されている。
特に昨今の日本のファッションテーゼである、「ラギッドスタイル」から絶大な支持を受けオーセンティックな重厚感のあるメルトン生地を使用したもの、薄手の生地を使用したモード感のあるシャープに仕上げたもの、ウールやアルパカなど暖かみのある素材を混紡したもの、タータンチェックやバッファローチェックなど個性的な表地を用いたものなど、実に様々なタイプが存在する。
どんなアイテムとも違和感なくマッチするので、モード、ストリートスタイル、クラシックスタイルまでそのバリエーションは実に幅広い。

多くのアパレルブランドが手掛けているが、その出自からミリタリーウェア、マリンウェアのメーカーは歴史が古く、完成度が高い。
グローバーオール、アメリカのフィデリティーなどが正にそれで、代表的なブランドになっている。

Pコート/pcoat