キーマンインタビュー

シセイの創業者 大平 智生さんにインタビュー 3

シセイの工房にお伺いし、創業者であり皮革製品職人である大平 智生さんにインタビュー。
大平さんがシセイを立ち上げるまでのヒストリーからイタリアの職人事情までオープンにお話しいただきました。

インタビュー実施:2011年1月

  大平さんが、独立をしようと考えたのは何故でしょうか。

  チェレリーニで働きながら自身のブランドをはじめて、夜と週末の時間を使って行っていたのですが、2シーズン程やったところでこのままでは無理があるなあ、と感じたので場所を借りて自身のブランドに専念することにしました。

  最初に始めたときはイタリアのお客様向けだったのですか?

  神藤さんと話をして日本向けに展開していました。

  現在は日本のみで展開されているのですか?

  一時期ミラノのショールームに展示させていただいたりしたのですが、その為にサンプルなどを揃えなくてはいけないし、ミラノに行ったりなどもしなくてはならないので、今はお休みしています。
本当は今年のピッティに小さなブースを出したかったのですが、そうこうしている間に・・・

  日本からオーダーが殺到してそれどころではなくなってしまったと(笑)。

  はい(笑)。
もう少し準備をしたら折角フィレンツェで近いので、ピッティに出展したいです。

  正式に独立したのは何年でしょうか?

  2006年です。

  STILE(GLOBERの前身)を開始したのが2006年初めなので、当店が最初にチェレリーニでオーダーした時はまだ大平さんはいらっしゃったのですね。
2006年のピッティに来た時にたまたまチェレリーニの前を通り一目ぼれし、すぐにオーダーさせてもらいました。

  その時は私も居たと思いますよ(笑)。

  今CISEIは高級バッグという位置づけにあると思いますが独立当初からこのようにハイエンドの路線でいこうと思っていたのですか?

  安いものを作ろうという気持ちは無かったですね。

  例えばナイロンを使ったものだとか。

  それは無かったですね。
初めからやるんだったら革でやろうと思ってました。
値段的にはいきなり8万~10万というよりは、キャンバスと革のコンビで始めて、少し値段を抑えていたんですけど。
ただその後にオールレザーで出してみたらそちらの方が人気が出ました。

  8万~10万位のものが売れてます。
革はバッファローも使われていますね。

  バッファローは色がたくさんあるタンナーを見つけたので、色物ではバッファローを入れて、あとはシボの入っているものを4色くらいで展開しています。

  先日リデアさんに通常使用しているものよりもワンランク上の革を見せていただいて、すごいなと思ったんですけど、「価格が二倍になりますよ」と伺いました。

  そちらの革の方が種類は多いかもしれません。
エルメスはほとんどこの革を使っているんですよ。

  ドイツのワインハイマーですね。
やはりそのタンナーさんの革が一番良いのですか?

  鞄用だと一番良いのではないでしょうか。
靴用などだと他にも色々あると思いますが。

  バッファローレザーのどのようなところに魅力を感じますか?

  バッファローは見た目のシボのキメが揃っていないところとか、独特の凹凸感だとかそのあたりが魅力ですね。

  製品として出来上がった時に見栄えするというか?

  独特の雰囲気があると思います。

  シセイさんで使用されている革は薬品などは使用しているのでしょうか?

  はい、手揉みではなく、シュリンク加工を施す際は薬品で加工しますしね。
タンナーさんが言うには、一応薬品は使っているけど、環境汚染物質は全く使っていないという事です。
エコ鞣しという事らしいです。

  ライニングで一番多いのはビックスキンです。

  一昨年まで出していたので一番多いのはビックスキンですね。
去年あたりからもう少し柔らかくて軽い素材をということで、内貼りにナイロンを試してみようと思って造ったりしています。

  ビックスキンを使用する理由は何かありますか?

  耐久性と雰囲気です。
あとは芯地を使わないで形を出した時、革と革を2枚貼り合わせた時に、より張りが出るというか。

  張りが出るというのは?

  普通の作りだと外側と内側を別々に作って最後にステッチで繋げるのですが、そうではなくて革を二重にして出すことで、素材の出すラインというものを出してあげることができます。

  素材の良さを活かす事が出来ると。

  そうです。

  芯地を使うとそのようなものが上手く出てこないのでしょうか?

  芯地を使うとごまかしが多くなると思うんですよ。そこまで良くない革でも芯できれいに形を出してしまえば高そうに見えたりするので。
逆に使わないとパッと見は悪くも見えるんですけど、そうではなくてそれが素材本来の良さを出していたりします。

  ナイロンをライナーに使ってみるのはどのような意図ですか?

  軽いものを造ってみようと思い、初めは何も貼らないで革の裏側を剥き出しでやろうと考えたのですが、実際に造ってみたらこれではダメだということで、じゃ ナイロンでという事になりました。

  その辺は(シセイの販売代理店リデア社の)神藤さんともよくお話をされるのですか?

  神藤さんは年に4、5回程こちらに来ているので、毎回会って打ち合わせをして次は何をやろうか、とか こんなのをやって欲しいという事などを話しています。
素材の展示会も来れる時は一緒に行って、目新しいものを探したりしています。

  無茶な注文とかはありますか?

  無茶な注文ばかりです(笑)。

 
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