ファッション用語事典

センツァ・インテルノ Senza Interlno

センツァ・インテルノとは、肩パットや芯地を最小限に留め、裏地を持たない軽い一枚仕立てのジャケットを指す。
センツァとはイタリア語で「無」という意味で、インテルノとは「中身・芯」を表している。
センツァ・インテルノは、ナポリのテーラーたちが得意としている技巧の1つで、特に日本ではマニカ・カミーチャと共に人気を博しているスタイルである。
総裏地仕様のものに比べ、裏地で覆うことによるライニングで、仕上げのミスを隠すことが出来ない為、テーラーの技術が一目瞭然となる高度なテーラリング技術である。
同時に、裏地を用いないことで、ジャケットの背中から腰にかけての部分が体の線にぴったりと沿ったS字ラインを描き、非常に男らしいグラマラスな印象となる。

ジャケットの着心地の良さは、しばしば「カーディガンのような着心地」と例えられる。これは詰まる所、「如何に軽くて動きやすいか」を表現したものだ。
イタリアのサルト達のテーらリングの醍醐味は、この「如何に軽くて動きやすいか」であり、その結果が、スフォデラートとも呼ばれるセンツァ・インテルノ仕立てなのだ。
ジャケットの元となるウールやカシミアの生地は、平面、つまり二次元である。
これを人体に沿うように三次元の立体に構築するには、何時間も掛けて幾度となく鉄アレイのように重たいアイロンでプレスし、生地を寝かせ、馴染ませなければならない。
特にセンツァ・インテルノの場合、ジャケットの形を保つ為の副資素材である、肩パッドや芯地を用いない為に、通常よりも、よほど丁寧なアイロンワークが求められる。
また、一流のテーラーやファクトリーになればなるほど、使う生地や素材も繊細なものが多い為、何十年という年月をかけて、職人技のアイロンワークを身につけるのである。
人間の体は直線的ではなく、丸く曲線を描く。
また、一人一人体つきの特徴も微妙に異なる。
なで肩、いかり肩、猫背など、恰幅の良い人や逆に細身の人間もいるだろう。
腕の長さも異なれば、胸囲や腰回りも千差万別だ。
その個々の人体の曲線に沿うように、あてがう生地の部分によって、プレスの強弱を職人の勘で絶妙に調節しつつ、繰り返し繰り返しアイロン掛けをする。
そうして生地を丁寧に折り曲げることで、着用者の体にぴったりと沿う立体的な生地に仕上がっていく。
軽いセンツァ・インテルノ仕立てのジャケットを軽快に羽織った姿は、文字通り、「肩で風を切る」といった粋な風情だ。

センツァ・インテルノ/Senza Interlno