ファッション用語事典

リネン Linen

リネンは独特のシャリ感と清涼感を持つ夏の代表的な生地である。
コットンやシルクに比べ吸湿・発散性に優れているため、汗をすばやく吸い取り、かつ発散させる。
防虫性に優れ、雑菌の繁殖を抑制するので、臭いも防いでくれる。
実際にコットンの公定水分率(ある条件で素材がどれだけ湿気を吸う力があるかを示す数値)が約7~8%に対し、リネンは約12%と1.5倍近い吸湿性を持っている。
また、コットンは吸った水分を溜める特性に対してリネンは外に逃がす特性を持っている。

そもそもリネンの語源はフランス語のLinge(ランジェ、下着類の意)から派生した。
当時、下着の布地と言えば専らリネンが広く使われていた。
そのためランジュは下着の代名詞となり、フランス語辞典にもLinge=リネンの婦人用肌着とある。
フランス語ではLinenをLin(日本語読みでラン)と呼んでいる。
古代エジプトの時代には、リネンは朗らかさと純潔を表し、富の象徴でもあり、ある時には通貨の役割も果たしていた。
古代エジプト人たちはリネンを称して”Woven Moonlight”、月光で織られた土地と呼び、広く神事にも使用した。
現に1881年にファラオ・ラムぜス2世のミイラが発見された際にもファラオの遺体は純白のリネンの布に包まれ、彼の死後3000年以上経過した後でさえ、ファラオの遺体は完璧な状態で保存されていた。

リネンで最上等なものはアイリッシュリネンである。
リネンにも細番手から太番手まで色々ある。
春秋向けのごわごわした生地感の比較的重さのあるものから、真夏に最適なしなやかなタッチの軽量なリネンまで様々だ。

アイルランドでリネン作りが活発になったのは、西暦1500年代の宗教改革の時代に遡る。勢力を広げつつあった新教徒に追われて、フランダース地方などの旧教徒のリネン技術者が、 大量にアイルランドに移民したのがきっかけだ。
こうしてアイルランドで上質のリネンが作られるようになったが、アイルランド産のリネンが世界的に有名になった事件がある。
それは、アメリカ南北戦争で、戦乱の最中、米国国内でコットンの生産が出来なくなった米国が、コットンの代替品としてアイルランドから 大量のリネンを輸入したのがきっかけである。
その優れた品質がアメリカに認められ、アイリッシュ・リネンは、最高品質のリネンとして、 世界的に認められるようになったのだ。

現在では国際的分業が進み、フランスの畑で収穫されたフラックスと呼ばれるリネンの原料を輸入するか、 またはベルギーで繊維に加工したものを、アイルランド国内の工場でリネンに織り上げている。
農業国フランスには広大な畑があり、農作物であるフラックスの生産は盛んに行なわれているものの、織物生産や製品工程の産業が仏国内には少ない。
その為、加工の工程は、ベルギーやアイルランド、イタリアなどで行われるのが現状だ。

リネンは、使い込む程にその柔らかさを増していく。着るたびにシワが柔らかくなり、独特の風合いに変化する。リネン素材のポケットチーフなどは最もフォーマルなチーフとしてビジネスシーンで広く愛用されている。
リネン/Linen