イタリア語の「パルト/Palto」の語源をたどるのは簡単ではありません。
「palto」はフランス語の「paletot」からきた言葉で、その語源は中世英語の「paltok」とされていますが、その先は定かではありません。
語源は謎に包まれたままですが、どちらの国でも同じ音で発音され、しかも「メンズやレディースの冬のオーバーコート」という同じ意味で使われていることは紛れもない事実です。
イタリアで「palto」という言葉が使われ始めたのは19世紀に入ってからです。
マナーが重視されていたその当時、「palto」は寒さをしのぐ理想的なウェアのことを指していました。
やがてコートは長年持ち続ける高級品となり、コートの購入は一家の一大事とされた時代もありました。
さらにその後、コートは男性らしさや女性らしさを表現するアイテムとして、エレガントさのシンボルになりました。
フランス語の「paletot」が持つイメージはフォーマルさや洗練された雰囲気だけではありません。
作家ベルンハルト・レッツェル(Bernhard Roetzel)は彼の著書「Gentleman. A Timeless Guide to Fashion(紳士へのガイド)」で、コートはその形状から身体の保護機能がある、と述べています。
着ている人を厳しい環境から守るカバリングの役割を果たし、外の世界から防御するシールドとして機能するのです。
寒さ厳しく、快適さに欠ける劣悪な環境で、コートを着る必要性を感じた経験のある方は多いはずです。
「palto(コート)」は単なるウェアではありません。
その特性を活かすことが大切です。
コートの真価を理解する人だけに通じる心理的な機能があるものなのです。
1950 年代から60 年代にかけて、コートはエレガンスの象徴とされました。
映画「甘い生活(原題:La Dolce Vita)」の時代に活躍した俳優やロックンロール歌手たちは、マストリヤンニ、ジャン・ポール・ベルモンド、ポール・ニューマン、マーロン・ブランド、スティーブ・マックイーン、ロバート・デニーロ、ミック・ジャガー、ジョン・レノンにいたるまで、誰もが重要な場面でコートを着用していました。
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