N-3Bとは、膝丈までの着丈の長さと、着脱可能なフードが特徴のアメリカ軍出自の代表的な本格ミリタリーアウターのことである。
1950年代に米国陸軍兵が極寒の地を凌ぐ為に作られ、別名シュノーケルパーカーとも言う。
元来、オリジナルのN-3Bは、表地にはセージグリーン色をしたデュポン社製のシルクナイロンを採用していた。
この頃のN-3Bは、太陽光線を浴びると、紫外線の影響を受け、セージグリーン色が淡いマゼンタ色に変色する、変わった特徴が見られた。
しかし、軍人たちにとって、この変色は一種の勲章でさえあった。
何故ならコートが変色を来たすまでには、長時間の間、太陽光線に晒される必要があった為、変色が大きければ大きい分だけ、軍にそれだけの長きに渡る間、貢献していたという証になるからであった。
N-3Bがファッションに於ける市民権を確立したのは、1970年代から1980年代の英国のモッズスタイルであった。
当時の英国の労働者階級の若者たちにとって、手の届く価格で、かつ防寒性の高いアウターと言えば、N-3B位のものであった。
その為、ストリートを出自に持つ若者であれば、必ずと言っていいほどN-3Bを羽織り、そのやり場のない鬱憤や怒りを、ロックミュージックに込めたのだ。
そうしたストリート出身のミュージシャンたちが、彼らの出自やアイコンをアピールする為に、モッズスタイルに身を包み、それまで野暮で、粗野な印象の強かったN-3Bを初めとするミリタリーファッションは大きく躍進を遂げた。
N-3Bは、昨今のラギッドスタイルの流行と共に冬のワードローブのマストアイテムとなっている。
元々の出自でもある極寒用アウターギアとしての機能性や防寒性といったスペックの高さと、タウンユースとしても使えるようスタイリッシュなシルエットに変貌し、インナーを選ばない汎用性の高さや、性別を問わないジェンダーレスな雰囲気、年代を問わず様々なスタイルのN-3Bがあることも人気を博している要因である。
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