キーマンインタビュー

シセイの創業者 大平 智生さんにインタビュー 4

シセイの工房にお伺いし、創業者であり皮革製品職人である大平 智生さんにインタビュー。
大平さんがシセイを立ち上げるまでのヒストリーからイタリアの職人事情までオープンにお話しいただきました。

インタビュー実施:2011年1月

  神藤さんからは具体的なデザインも出てくるのですか?

  大体彼が持ってくる絵を改良しながらあーなんじゃないかこーなんじゃないかと言ってデザインを決めていく事が多いですね。

  鞄は何型位ありますか?

  今まで造ったのは廃盤になったものも含めて50型位あると思うんですけど、今出回っているのは15?20型位です。

  デザインは最初からパッと浮かびますか?

  うーん、まぁ最近は浮かばないんですけど(笑)。
結構パッと浮かんで、そこからササッと描いてみて、という感じなので、そう意味では一生懸命一杯描いてというような苦労はあまりしていないです。

  チェレリーニのようなかっちりしたデザインとは違う感じですね。

  あんまりそういうのは売りたくないかなと。
ちょっとかっちりしたものを造ったりもしていますが、自分の方向性としては柔らか目のものを売っていきたいというのがあります。

  そんな中クラッチを出そうと思ったのは大平さんですか?

  クラッチは必要だという事で神藤さんと相談して出そうと決めました。

  本当にもう二人で共同作業みたいな感じなんですね。

  そうですね。
僕が造ってみて「いや、こんなのダメだ」と言われる事もありますしね。

  大平さんは結構受け入れる方なんですか?
「それは少し違うな」みたいなことはありませんか?

  それはありますよ。
そういう反発も沢山あるのですが、みなさんが何を求めているかをよく知っているのは彼ですから。
彼のことは全面的に信頼しています(笑)。
迷彩柄を展開する時も、電話が掛かってきて迷彩をプリント出来るところを探してくれと。
いや、迷彩はうちっぽく無いんじゃないかと言ったんですけど、いや、大丈夫だという事で印刷屋さんをいろいろ探して、革は今まで使っていたもので、とりあえず試しに印刷してもらったらシボが入って出来上がった感じを見て、”あっ、もしかしてこれは良い感じになるかも”といった感じがありましたね。
そこまで押されてやらされてみてから、良いかもと気づいたという感じです。

  迷彩に使用する革というのは無地のものですか?
さっきのような真っ白のものに印刷するのですか?

  ベースの色は入ってます。
革は一度革屋さんから預かってそれを印刷屋に持っていくのですが、その時点ではまだスムースの状態でシボ加工がされていないのです。
印刷してもらった後に最後に仕上げるという風にしています。

  印刷屋さんというのは革に印刷をする専門の業者にお願いされているのでしょうか?

  そうですね。革印刷専門の業者に依頼をしています。
立地としては少し遠いのですが。

  トゥモローランドさんでクラッチバッグの迷彩を拝見したのですが、カッコイイなぁと思いました。

  トゥモローランドさんだけ先行で展開しているのですよ。
ボストンも予定しています。

  二本のラインが入ったものを出されましたね?
あれはどなたのアイデアですか?

  あれは僕です。
デザインの段階では神藤さんには「これはどうかなー?」と言われたんですけどね(笑)。
でも実際造ってみたらあー良いんじゃない?という感じになって。
僕が元々バイクとか好きだったので、そういったデザインをしてみました。

  シセイさんは会社としての販売目標みたいなものはありますか?

  目標は神藤さんの方で立ててますね。
僕としてはそういう数字的な事よりも、システムをしっかりして品質を落とさないというところを重視しています。
外注に出すと、同じ所に依頼しても仕上がりにムラが出てきてしまったりするので。

  外注に出すときは造り方とか品質管理などを時間を掛けて指導されているのですか?

  初めに何回も造らせるのですが、実際に生産でロットを渡してしまうとかなり手を抜かれたりとかして。
それで今まで色々なところを試していたんですけど、去年くらいから同じところでじっくりとやることにしました。
正直なところ、どうしても自分で造ったものと比べると違うものがあがって来てしまうのです。

  やっぱり違うものなのですね?
素人が見ても一目で違いが判るくらいなのでしょうか?

  そこはちょっと僕には解らないですけど、全体的にもう一歩足りないといった感じです。
指示した事は全部やってもらっているのですが、心が入っていないというような感じでしょうか。

  独立された直後と今で心境の変化のようなものはありましたか?

  やりたいことができるようになったので、気持ち的にはすごく幸せですね。

  やりたいことというのは?

  デザイン的にもそうですし、仕事として造りの面でもそうです。

  独立した当初から自分のものが売れるという自信はありましたか?

  いやー、それはなかったですね。
神藤さんからもそういう風に大丈夫だとは言われなかったので。
ただ、売れるかわからないけど、俺は信じるからとは言ってもらっていましたね。
これで売れなくなっちゃったら、どうなっちゃうんだろうという不安はいつもありますよ。

  今、目標は何かありますか?

  日本以外への展開です。
イタリアでは現在展開していないので。
リデアさんのスタッフなどに使用していただいているところ、ピッティなどでの評判は良いらしいです。
他のピッティに出されているブランドから造ってくれという話はずっとあったんですけど、とりあえずそういうのを断って、自身のブランドとして出したいという思いがあります。

  今実際に買われているのは男性の方が多いですよね?

  はい。ただ、女性用の一回り小さいトートなどはあります。

  革小物も色々企画中でしょうか?

  企画中なのですが、小物の場合はロット数が多くないと中々造れないのでそれで今までずっと引っかかっていたのですが、目途がたったので。

  来年位にリリースする感じでしょうか?

  早ければ今年中にできると思います。

  今考案中のバッグなどはありますか?

  今回間に合わなかったのですが、今年の秋冬のアイデアはまとまっているので、それをこれから一生懸命造るという感じです。

  本日はありがとうございました。新作も楽しみにしています。
大平さん着用のスーツはフィレンツェで活躍中の日本人サルトリアCORCOSで仕立て、完成したばかりの一着です。

 
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