マニカカミーチャとは、日本語で雨降り袖という意で、シャツの袖付けのように肩にギャザーを寄せて付ける技法のことを指す。
袖山の膨らみが美しく、体の肩の動きに対する運動量と稼働域が広がる。
イタリアのナポリのサルトが好んで用いる技法の1つである。
マニカカミーチャという名は、キトンやチェザーレ・アットリーニなど、クラシックスタイルをベースにしたナポリ出自のメーカーが日本に紹介され始めた頃に、「クラシコイタリア」という名前とともに一気にその名が広がった。
それまで知る人ぞ知る存在であったナポリの伝統的なサルトの技法であるマニカ・カミーチャを取り入れることで、肩周りの稼働域が広がり、着心地が格段に増すことを、キトンやアットリーニたちは良く知っていたのである。
それだけでなく、見た目にもリラックスした表情が生まれ、着ている本人の個性を際立たせることも十分熟知していた。
英米の鎧のようなスーツや、ボックス型と呼ばれるたっぷりとしたスーツと異なり、イタリアのスーツの最大の特徴は、着ている本人の体型に沿いながらも、決して窮屈になる事無く、極めてリラックスした着心地を体現することである。
その着心地を追求した結果、狭く攻め込まれたアームホールに加えて、最小限の副資材のみ用いたマニカカミーチャが多用されているのだ。
しかし、ナポリのサルトと言えども、クラシックなスーツやタキシード、或いはネイビーブレザーにマニカカミーチャを用いることは殆ど無い。
そうした類の装いには、カジュアルな雰囲気を持つマニカ・カミーチャは相応しくないと考えているからである。
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