ショーツとは膝上までの丈の、文字通りトラウザーやチノパンの「ショート」丈のパンツのことで、夏のバカンスシーズンにキャンバスのスニーカーやドライビングシューズ、デッキシューズに合わせて履かれることが多い。
米国では、”short pants”という単語がほぼ「ショーツ」と同義であり、主にランニングやジョギング時に用いられるハーフ丈のパンツもしくは、下着を「ショーツ」と呼ぶ。
英国ではそういった用いられ方は一般的ではなく、下着を指す場合などは、単に”pants” と呼ぶので、英語を母国語としない人々に混乱を招くこともしばしばある。
19世紀から20世紀初頭にかけて、ショーツは、トラウザーを穿くような、ある一定の年齢に達するまでの代替品として、10代前半の少年たちが穿くものであった。
欧米では青春期を迎えた子供たちが両親からトラウザーをプレゼントされる習慣があり、それは少年からの卒業を意味する、一種の「儀式」でもあった。
この習慣が「ショーツ=子供の穿くもの」というイメージを作り出し、現在でもそうした価値観は残っている。
アメリカの19世紀までの伝統的な学生服のショーツスタイルは、膝下までの長い靴下を合わせるものであったが、20世紀に入るとニッカボッカーズが広まり、アメリカではショーツスタイルの学生服が廃れ、むしろヨーロッパに於いてショーツスタイルの学生服が人気を博すようになっていた。
第二次大戦期に入ると、熱帯性気候やジャングルの密林での戦闘活動にはショーツの方がより適していたので、トラウザーよりもショーツの方が陸軍隊員たちには好まれた。
戦後、彼らは持ち帰ったショーツをバカンスやサマーシーズンに多用した。
また、アメリカの偉大なる映画俳優たちも、フィルムの中のリラックスした場面に於いて、颯爽とショーツを穿き着こなし、ショーツスタイルの浸透に一役買っていた。
大人のカジュアルスタイルにも、ショーツはサマーシーズンのマストアイテムになっている。
特にヨーロッパでは、サマーシーズンは、長期のヴァカンスシーズンに当たる。
ミラネーゼやフィレンツェの人々は、普段の堅苦しいスーツ姿から解放された喜びを表すように、思い思いに開放感のあるカジュアルスタイルを楽しむ。
ショーツにドライビングシューズやスエードのスリッポンを素足で履き、リネンのシャツや一枚仕立ての軽いリネンのジャケットを颯爽と羽織る。
ヨーロッパの夏の風物詩とも言える、サマーシーズンに良く合うスタイルだ。
昨今では、インコテックスやGTAに限らず、PT01、ヤコブコーエンなどが目にも鮮やかなイタリアらしい美しい色遣いのショーツを数多く発表している。
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