M-51ジャケットとは、アメリカ軍用に作られた防寒性・撥水性に優れた9オンスのコットンサテン生地を用いたジャケットを指す。
別名フィッシュテールパーカーと言い、文字通り魚の背ビレのように背中の着丈が前方の着丈よりも長いことに由来。
元々、M-51は1950年の朝鮮戦争に於いて戦闘服としてアメリカ陸軍に採用されたルーツを持つ。
M-51のMは「Model=モデル」を表し、51は1951年という年号を表している。
bonesmock、ドイツ語でKnochensackと呼ばれる、第2次世界大戦中、ドイツ空軍パラシュート部隊が使用していたミリタリージャケットにも酷似し、ボタンカフ(留め)と着脱可能なライニング、フードを襟に装備し、数あるミリタリージャケット類の中でも防水性・防寒性に優れた最もコートらしいコートと言える。
1960年代のイギリス音楽シーンにおいて、M-51は、それまでのミリタリーギアとしてではなく、「モッズ・カルチャー」のシンボリックなファッションアイテムとして若者たちの支持を得た。
その影響が如何に計り知れないものだったのかを見事に物語る一本の映画がある。
英国近代映画史にその名を残すモッズ映画の金字塔、「さらば青春の光」(原題:QUADROPHENIA、THE WHOが1973年に発表したアルバムをベースに作成)だ。
この中には、当時のM-51のファッションスタイルを見事に表現したシーンが幾つも見られる。
ポリスのスティングやその仲間たちが、ヴェスパやランブレッタのスクーターに跨り、M-51を颯爽と羽織る英国労働者階級での救いのない若者たちのモッズスタイル。
ドラッグやアルコール、セックスに溺れ、ギャングの抗争に明け暮れる毎日。
そうしたリアルな英国労働者階級の姿を映しだしたこの映画は、当初、スノッブな批評家や映画評論家たちからは酷評されたが、後に英国ロックミュージックを代表するバンドととなる、シークレット・アフェアーやコーズ、ザ・ランブレッタズに与えた影響は計り知れない。
昨今の「スタイリッシュ&ラギッド」がキーワードのファッションにとって、モードとしての機能性と、ミリタリーのラギッドな雰囲気を兼ね備えたM-51は欠かすことの出来ない冬の定番アウターとなっている。
フードにファーの付いたタイプ、ライニング取り外し可能のタイプなど、秋から冬はもちろんのこと、春先まで着まわせるパフォーマンスの高さも魅力だ。
表地にも保温性の高いハイテク素材や、着込んだ味のある雰囲気を楽しめるウォッシュドコットンのもの、オイルを染み込ませたようなハードな雰囲気に仕上げたものなど、多種多様なM-51が揃う。
インにシャツやカーディガンを合わせてモッズらしい英国的クラシックさと上品さを巧みに演出するのが着こなしのポイントである。
最近では、ドレスコードのカジュアル化により、ビジネススーツの上にモッズコートを羽織る若いビジネスマンも多い。
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