ペッカリーとは、南米に生息する鯨偶蹄目ペッカリー科に属するイノシシに似た動物の事で、世界中で最も希少価値の高い皮革であり、主に手袋用皮革として用いられる。
ペッカリーグローブを生産している代表的なメーカーは、英国王室御用達のデンツ、レイノルズ&ケント、伊メローラ、アルポなどが特に知られている。
英国最古参、現在でも残存する、英国唯一の手袋メーカーといっても過言ではないデンツは、英国女王エリザベス2世に手袋を献上した功績を持つ、老舗中の老舗である。
ペッカリーの革は、通常のレザーに比べると非常に硬い為、たった一組の手袋を作るのにも、32もの工程を要する。
革の縫製は、熟練したお針子たちが、ハンドと機械を上手にブレンドして、巧みに縫製をしていく。
手袋の縫製方法には、通常、縫い目が表から見えないインシーム縫製と、合わせ目が外に出ているブリックシーム製法がある。
縫い目が表に出ていると、一見するとカジュアルな雰囲気がするが、クラシックスタイルを愛する紳士達には、その素朴で朴訥とした雰囲気が愛され、ペッカリー手袋には、ブリックシーム製法が施されている事が殆どである。
また、ペッカリー手袋の裁断には、マスターカッターと呼ばれる革の裁断師の技術と経験によるところが大きい。
長年の経験と勘から生まれたカッターの確かな目が、革の形作りとフィット感に大きく影響する。
そうして作られたペッカリーグローブの感触は、「手袋をしたまま新聞をめくることができる」と言われる程ぴったりとした申し分のない出来となる。
ペッカリーグローブは、使い始めは非常に美しい光沢と伸縮性に優れ、長く使い込んでいくうちに独特のシボ感と革自体の柔らかさが着用者の手にぴったりと馴染んでいく。
ライニングには、保温性を考慮して、英国製のラムズウールやカシミアなどが用いられることが多い。
また、よりスマートな印象を与えるノーライニングの手袋も人気である。
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