ファッション用語事典

ジーンズ Jeans

ジーンズとは、デニム生地を用いた5ポケット型のパンツを指す。
その語源はフランス語の“bleu de Genes”、「ジェノアの青」という意で、ジェノアは中世ラテン語で Genua 、フランス語で Gene であり、英語の jean の語源となっている。

1850年代のアメリカ合衆国カリフォルニア。
鉱山労働者たちが暮らす、郊外のとある小さな町で、「Levi Strauss & Co」という名の呉服問屋を営んでいたユダヤ系ドイツ人、リーバイ・ストラウスは、 彼の名である「Levi’s」を冠した、ダンガリーズと当時呼ばれる、厚手のキャンバスやコットン地のパンツを労働者たち相手に販売していた。
ストラウスの顧客の1人であった、仕立て屋のヤコブ・デービスは, ストラウスの呉服問屋から生地を仕入れ、仕立て服を作るだけでなく、ストラウスの問屋から仕入れたオフホワイト色の、厚手のコットンキャンバス地を用いて、オーバーオールやコットンパンツ、更にはテントやワゴン車のカバーなども仕立てていた。
1871年のとある日、ある1人の女性がデービスの元に夫の為のパンツを仕立てて欲しいと頼みに来た。
彼女の夫はとても太っており、通常のパンツでは仕立てようがないと考えた。。
そこでデービスはパンツが破けてしまわいようパンツの中でも比較的負荷が掛かり破けやすい部分である、ポケットの四隅やボタンフライ付近を補強する為に、銅リベットを用いることを考案した。
150年以上経た現代でも、この革新的な考えが、デニムパンツの縫製に用いられている。
デービスは彼のアイディアを他の者が真似をしたり、盗まれたりしてしまうことを恐れていた。
しかし彼には彼の斬新なるアイディアの特許を取得するだけの十分な資金が無かった。
そこで、彼はストラウスに権利を折半するという条件で手紙を書いた。
程なく、ストラウスはデービスからの申し出を了承し、1873年5月20日、”Improvement in Fastening Pocket-Openings,” (ポケットと開閉部分の補強に関する改良)という名の米国特許を取得した。
デービスは特許を取得するだけでなく、実際にストラウスの経営していた工場のパンツ製造ラインの責任者としてリベット補強パンツの製造にあたり、このリベット補強パンツはリーバイ・ストラウス社製の製品として製造販売された。
このパンツが現在まで通ずるジーンズの原型である。

ジーンズは長い間、安さと丈夫さが売りの、田舎のドラッグストアでもスーパーマーケットでも買えるパンツに過ぎなかった。
1885年当時、ジーンズは1本凡そ1.5USドル(現在のレートで約35USドル)であった。
ジーンズは、「労働者たちの為の頑丈なパンツ」という頑迷な役割を粛々と全うしていた。
この野暮で粗野なイメージが、1955年の映画「理由なき反抗」の中でジェームズ・ディーンがLee RIDERS 101を着用した事を契機に一変した。
ジーンズは若者たちの反抗を表す、シンボリックなファッションアイテムとして世界的な市民権を獲得した。
一方、そうした反社会的なイメージから、現在でもフォーマルなシーンやレストラン、劇場などではジーンズの着用は禁じられているか、相応しくないものとされている。
ジーンズは、最早欠かすことのできない不動の地位を獲得した。
いまだフォーマルなシーンでの着用が憚られるとは言え、これ程までに汎用性の高いパンツが無いことも事実である。

ジーンズはどんなトップスとも合わせることが出来るし、靴もドレス靴だろうと、夏のリゾートサンダルであろうと、どんなアイテムともマッチする。
歴史上、最も完成されたシルエットのジーンズが、リーバイスの501であることに異論の余地はない。
だが、成熟した大人の男が履けるスタイリッシュなジーンズブランドには、イタリアのヤコブコーエンやPT05、ノティファイ、インコテックスのチンクエタスケなどであろう。
伝統的なパンタローネ職人の秀逸なテーラリング技術を巧みに取り入れ、まるでスラックスのようにテーパードし、デニム生地は世界最高級の日本の岡山産を使用し、今までにない都会的な雰囲気とテーラー仕立ての履き心地が人気を博している。
上質なスエード靴に、仕立ての良いドレスシャツとテーラードジャケットを合わせ、ミラノ紳士のように粋に履きこなすのが最もコンテンポラリークラシックスタイルである。