ファッション用語事典

コードバン – Cordvan

コードバンは、馬の臀部の高繊維密度の革の厚い部分を用いていることから、革の中でも最も丈夫な革とされている。
また、この革の厚い部分がシェルと呼ばれることから、別名シェルコードバンとも呼ばれている。、
コードバンの革は、繊維が非常に細かく、耐久性に優れている。
赤味掛った濃褐色の色合いが非常に美しく光るのが特徴的。

コードバンの語源は、古くは スペインのコルドバ(cordova)地方で生産される、毛穴模様の目立たない滑らかな銀面(皮の表皮を指す)を持った艶のある山羊革を指した。
やがてコードバン調の山羊革が、スペイン以外の国々でも生産されるようになり、いつしかそれに似た馬革が 、「cordvan leather」と呼ばれるようになった。

通常、皮革製品に用いる牛や鹿、馬などの動物の皮は、銀面と呼ばれる動物の表側が用いられる。
しかし、コードバンは全くその逆で、皮膚の内側断面における、鏡や、はかねと呼ばれる繊維組織の中心付近にある非常に緻密な層を表面に出し、磨き上げて使う。
更に、繊維組織も全く対照的である。
牛のカーフは、繊維組織が水平方向に向かって構成されているが、コードバンはそれが垂直方向に走り、しかも前者に比べて、遥かに緻密に構成されている。
前者が多数のシャープペンシルの芯が、横長にばらけた状態だとすれば、後者はそれが垂直にぎっしりと敷き詰められている、と例えられる。
そのように詰まった面を、半ば無理やり寝かせて鞣すことで、あのコードバン独特の、得も言われぬ鈍い光沢感が得られるのだ。

原皮となる農耕馬の減少によるコードバンの値段の高騰と、鞣す工程の途方も無い手間による負担増大によって、良質なコードバンを扱うタンナーは、今や日本の新喜皮革と、アメリカのホーウィン社の2社のみとなってしまった。
米国イリノイ州シカゴ市に本拠を構えるホーウィン社は、アメリカ紳士靴最高峰のオールデンに自社の皮革を卸していることで知られている。
オールデンの靴がここ数年急激に高騰しているのも、原皮のコードバンの生産量が減少しているからに他ならない。
また、オールデン以外にも、クロケット&ジョーンズや、エドワードグリーン、チャーチと言った錚々たる面々が、このホーウィン社の手掛けるコードバンを使用している。

コードバン/cordvan