チノはチノーズとも言い、「チノ・クロス」と呼ばれるコットンギャバジンに似た、丈夫な厚手の綾織り地のパンツの一種である。
チノとは、スペイン語で「中国の」=「中国製」を意味する言葉である。
第二次世界大戦中、米軍の下士官用制服に採用されたことを契機に、戦後、キャンパスに戻った学生たちが穿いたことで流行。
1960年代のアイビールックや、その後のプレッピースタイルにはマストアイテムとして、欠かせない存在である。
チノの原型は、19世紀英国のアーミー・クロスに端を発している。
その起源は1848年頃にまで遡る。
当時、インド北部のラホールに駐屯していた、英国インド駐留軍部隊長、サー・ハリー・ラムスデンは英国陸軍内で使われていた「ホワイト・コットン・ドリル」と呼ばれていた、白色のツイル調に織られたコットン地の軍服地を、コーヒー、カレーパウダー、そして桑の実のジュースをミックスして染め上げてしまおうと提案した。
当時、インドに駐屯していた兵士達は、現地特有の激しい砂埃で軍服が汚れることに頭を悩ませていた為、このサー・ラムズデンの突拍子もない提案に当然の如く賛成した。
この新しい黄褐色の風変わりなパンツは、インドでの陸軍生活に相応しい色合いだった。インド人はこの奇抜で斬新な色合いを、「土や土埃の色」を意味する「カーキ」と呼んだ。
チノはジーンズと並び、ほぼどんなシーンにも対応可能な汎用性の高いパンツである。
やや厚手の生地で、季節を問わずオールシーズン着用することが出来、ネクタイやスポーツジャケット、ブレザーとの相性も申し分ない。
ブルックスブラザーズのボタンダウンシャツに、アメリカ式のレジメンタルタイ、シングルのネイビーブレザーに、オールデンのローファーといった出で立ちに、チノパンを合わせれば申し分無い。
このトラディショナルな響きを含んだ、アイビースタイルは、60年代の東部エスタブリッシュメントのアイビーリーグの大学に通う学生たちのアイコン的スタイルである。
ミリタリー出自のパンツとして、アメリカンファッションの代表的スタイルであったチノパンであるが、PT01やインコテックス、GTAなど、イタリアの美脚パンツの代表的なブランドがこぞって毎年スリムフィット仕様の、ジャケットスタイルに相応しいスタイルの細身のチノパンを発表している。 |