キーマンインタビュー

ザンバルド・ショールーム社社長、マルコ・ザンバルド氏 インタビュー

ザンバルド・ショールーム社社長、マルコ・ザンバルド氏 インタビュー

各スナップ誌やファッション誌で引っ張りだこのザンバルドさん。
いつもラフなジャケットスタイルで私たちを楽しませてくれます。
特に彼のパンツのテーパード感と九分丈の長さは、最新のスタイリングに大きな影響を与えているでしょう。
彼のようなかっこいいスタイリングがどのようにして出来上がるのか?
メンズファッション最大の展示会、ピッティ・ウオモでその実像に迫りました。

インタビュー実施:2014年6月

  ザンバルドさんの仕事内容を教えてください。

  大きく分けると3つあります。
1つはアパレルブランドのエージェント業務です。
ラルディーニ(Lardini)、ティントリア・マッテイ(Tintoria Mattei)、スカリオーネ(Scaglione)、アントレ・アミ(Entre Amis)、チルコロ(Circolo 1901)などをショップに販売しています。
エリアはイタリア北東部をカバーしています。
2つ目はアパレルブランドのコンサルティングです。
ティントリア・マッテイ、1958サルトリアリスト、スカリオーネ、チルコロ、アントレ・アミなどのコンサルティングを行っています。
3つ目は自身のブランドの運営です。
エンメ・ゼータ・アルキーヴェ(MZ Archive)は私自身のブランドで私が全てディレクションしています。

  エンメ・ゼータ・アルキーヴェはデザインもされているのですね?

  エンメ・ゼータ・アルキーヴェのMZはMarco Zambaldoのイニシャルで、私自身がデザインしています。
このブランドはアメリカのミリタリーにインスパイアされたアイテムを扱っているブランドで、M65に毛皮をあしらったり、アクセサリーをつけたりして、M65を自分なりの世界観で表しています。
アントレ・アミやチルコロに関してはコンサルタントとして企画に携わっています。

  現在の仕事を始める以前もファッション業界で経歴を積まれたのでしょうか?

  大学卒業後、イヴ・サン・ローラン(Yves Saint-Laurent)やチェルッティ(Cerruti )などを扱うショールームに10年ほどいました。
私がそのショールームにいた頃はサン・ローランがグッチ・グループに買収される前で、ネルヴェーザ(Nervesa)というサルトリアメーカーがライセンスを持っていて、製造からディストリビューションまで全てネルヴェーザが行っていました。
そのショールームで私はサン・ローランやチェルッティなどに携わり、約10年を過ごしました。
その後独立し、自身のショールームを開きました。

  サン・ローランなどにいた経験があるから、クラシコ・イタリアだけでない、モードなどもミックスされたスタイルが出来ているのでしょうか?

  今は無くなってしまいましたが、ネルヴェーザ(Nervesa)はイタリアのいわゆるサルトリアルメーカーでした。
ネルヴェーザはサンローランの製造とディストリビューションや、カール・ラガーフェルドの重衣料の製造なども行っていました。
このネルヴェーザが倒産し、サンローランはグッチの手に渡るのですが、ネルヴェーザとの関係もあり、サンローランはテーラリングのレベルが非常に高いメーカーでした。
伝統的なテーラードをベースにしながら、そこに新しいモードを程よくミックスさせていく作業が私は好きなのです。
将来を見据えながら、クラシコをベースにどういう遊びが出来るかというのが私にとってとても興味があることです。
例えば、これは実際に製作したのですが、コンバースのスタンダードなオールスターにナイキのマークを入れたら、そんな靴があったらおもしろいと思いませんか。

  若い頃など、どのようなファッションを変遷をしてこられましたか。

  クラシックが私のファッションの始まりです。
ジャケット、スーツ、シャツ、ネクタイなど。
今も必要なシチュエーションに応じてはそういう格好でも出かけますが、やはり時代が求めるゆるさのようなものが年々大きくなってきています。
元々、カチカチの堅いクラシックでしたが、ゆるくなっていき、今は許される限りクラシックでないものも取り入れています。
趣味として、コンテンポラリーアートが大変好きなので、そのあたりも私のファッションに影響しているかもしれません。
要はクラシコをベースにいかに遊べるかということにすごく興味があります。
そういう意味ではヨウジ・ヤマモトやコムデ・ギャルソンなどは好きです。

  今、体にとてもフィットしているスタイリングがスタンダードですが、ザンバルドさんのスタイリングは特にそういう特徴がありますよね。
ザンバルドさんの洋服はオーダーメードが多いのでしょうか?
既製品でしたら必ずお直しなどをされているのでしょうか?

  洋服に関しては、自分が企画段階から関わっているので自ずと、フィッティングが細いものをつくっていると思います。
洋服はほとんど直しませんね。
これはサイズを直さないという意味であり、ボタンなどディティールを変えたり、染材を入れて染め直したり、普通は洗わないようなものを洗濯機にバーンと入れて、わざとしわくちゃにしたりなどといったことが好きです。

  パンツも直しませんか?

  やはり企画から入っているため直す必要が無いですね。
自分が企画に携わっていないブランドを買って、そのパンツが太い場合は当然直します。あとは、ここに縁取りのリボンを付けたりなど、いわゆる後加工的にパイピングを付けたりなどをたまにやります。

  裾幅はいくつにされていますか?

  16.5cmです。
身長は181cmで裾幅は16.5cmです。
パンツの長さにもよりますけどね。
今日穿いているパンツも16か16.5cmぐらいです。
これはアントレ・アミで自分でつくったものです。

  ご自身のブランド、エンメ・ゼータ・アルキーヴェの日本での展開は考えていらっしゃいますか?

  ミリタリーファッションやミリタリーアイテムというのは、デザイン的には直すところがない完璧なアイテムです。
そこにファーをつけたり、ボタン変えるなどということはしますし、身頃や袖を細くしたりとサイズ感は現在のトレンドに合わせますが、そこにポケットを余分に付けたり、取り去るといったデザイン自体を変えることは考えられません。
ワークウェアも同様です。
完璧なアイテムなのです。

  ザンバルドさんがミリタリーが大好きなことがすごく伝わってきます。
それで日本での展開はあるのでしょうか。

  エンメ・ゼータ・アルキーヴェは、海外展開の予定はありません。
欲しいと言ってくれる方はいらっしゃいますが、今はごく少数のショップに納めており、これ以上広げる予定はありません。
ほとんど手作りの1点ものですし、シリアルナンバーを付け、商品の写真を一着一着に付け販売しています。
69年のM65や84年のM65などいろんなバリエーションをリメイクしているんです。
例えば毛皮が付いたモデルは2500ユーロと結構な値段ですし、手間もかかるのです。

  1点ものとは意外でした。
好きでないとなかなかできないことですね。
それではご自身が携わっている以外で好きなブランドを教えてください。

  ビズビム(Visvim)が好きです。
カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)は天才だと思っています。
エルメス(Hermes)も当然いいですね。

  ザンバルドさんは靴もたくさんお持ちのようですが、好きな靴のブランドを教えていただけますか?

  オールデン(Alden)、レッド・ウイング(Red Wing)が好きです。
今日履いているのはマルタン・マンジェラ(Martin Margiela)のスニーカーです。
他にはバンズ(Vans)、コンバース(Converse)などですね。

  ありがとうございます。
ザンバルドさんの好きな世界がよくわかる気がします。

  私はいつも自分の好きなものをいかにみんなに届けるかということを考えています。
これからも今まで通り、自分がよいと思うものを世に紹介し、送り出していきたいと思っています。