キーマンインタビュー

アンダーソンズ社社長、リカルド・バレンティ氏 インタビュー

アンダーソンズ社社長、リカルド・バレンティ氏にインタビュー

確かなつくりと、様々なスタイルをカバーするデザイン対応力で人気のベルトファクトリー、アンダーソンズ。
この度、アンダーソンズ社社長、リカルド・バレンティ氏がイタリア・パルマより来日。
バレンティ氏とお話しする機会をいただき、彼のベルトつくりにかける思いをお届けします。

インタビュー実施:2014年4月

  当店は実店舗を持たずインターネットのみでファッションアイテムを販売させていただいていますが、アンダーソンズのベルトはお客様からの評価が高く、リピーターが多いブランドの1つです。

  今日ではファッションマーケットにおいてインターネットはもはや最も重要で、なくてはならない存在だと感じています。
カテゴリーによっては市場の50%以上をもウェブが占めているとも言われていますね。
スーパーブランドですらインターネット販売を始めていますしね。
インターネットはスピーディで身近な存在なので、ブランドが消費者と関係を築くのにとても効果的な媒体だと思います。
ウェブショップがインターネット上で写真やテキストなど様々な情報をお客様に提供ていますから、お客様はサイトを信頼して商品を購入できます。
このようにして信頼関係を築いていくことはとてもよいことだと思います。
アンダーソンズも例外ではありません。
現在のインターネット市場でファッションアクセサリーが占める割合は60%~80%で、高単価商材を扱うサイトにおいても、アクセサリーの占める割合は非常に高いと思います。
この傾向は世界共通と言えるでしょう。

  アンダーソンズ社ではベルト以外のアクセサリーも手掛けていますか?

  バッグのブランドもかつてはありましたが、現在では運営をストップしています。
将来的に、私の娘や孫など次の世代で再開する可能性はありますが、今はベルトだけに焦点をあててビジネスを進めるつもりです。
現在日本、アメリカ、オーストラリア、中国、ロシア、ヨーロッパ諸国等58か国と取引をしていて、一つ一つのマーケットに合わせた商品を作るだけで今は十分と考えています。
取引の95%を海外が占めていて、イタリア国内はわずか5%です。
今後もベルトにおいて、発展途上国など新たなマーケットを開拓していくつもりです。
アゼルバイジャンにはラグジュアリーブランドが既に進出しています。
理由はガス産業によってGDPが世界的にみてもとても高いからです。
この例を見ればどれだけ世界が変化してきているかがわかると思うのです。
例えば、フィリピンやベトナムが今のように成長するなんて5年前までは誰も想像がつきませんでした。
ユーロの経済危機などにより、ここ1年でイタリアのマーケットは減少しました。
この減少を補う為に、私たちは他の国々へマーケットを拡大しなければなりませんでした。
その結果、イタリアのマーケットは大きく縮小したにも関わらず、当社では利益を上げることに成功しました。
グローバルに展開できていない企業が潰れてしまっているイタリアの現状を見ると、環境変化に適応し成功した事は当社の強みと言えるでしょう。

  日本でのビジネスを始めたのはいつからでしょうか?

  2002年です。
メンズファッションの展示会、ピッティ・ウオモで日本のエージェントに出会ったことがきっかけです。
以来、おかげさまで日本のマーケットは順調に伸びています。
日本以外のマーケットではトータルコーディネートでどう見えるかということに重点を置いていることが多いのですが、日本人は一つ一つのディテールにこだわる傾向があります。
これがアンダーソンズの気質とマッチしました。
当社の製品は一つ一つのディテールにもこだわって独自の製法を用いていて、時間をかけて作っていますから。

 

  奇遇ですね。
当ショップがスタートしたのも2002年です。
こちらはベーシックなビジネス用ドレスベルトですが、当店でもベストセラーアイテムとして随時予約注文をお受けしています。

  アンダーソンズのベルトループは、バックルにとても近いところで縫い付けています。
普通はバックルとループがどうしても離れてしまいますが、手縫いも取り入れることでこれを実現しています。
そうすることで耐久性も上がるし、収まりも良くなります。

日本のマーケットのために作ったプンターレ付のベルトは、プンターレの金具の重さまで計算して作っています。
レザーが薄すぎるとプンターレとかみ合わないし、厚すぎると剣先がいい具合に垂れませんから。
こちらのレザーメッシュのダブルリングベルトもエージェントからの提案です。
レザーメッシュでダブルリングベルトと言えば、レザーを袋状にして、表裏を全く同じにするのですが、こちらは1枚革でダブルリングベルトをということでした。
1枚革だとリングで折り返した際にレザーの裏側が表に見えてしまうので、アンダーソンズでは途中でメッシュをひねり、1枚革にもかかわらず、裏側が見えないダブルリングベルトを制作しました。
私たちファクトリーとエージェント、そしてお客様の3者がいて初めてアンダーソンズのプロダクトが成立します。

  日本のリクエストで商品化したアイテムが、その後、他の国でもポピュラーになった例はありますか?

 

  プンターレ付きベルトは他の国でもヒットしましたね。
このゴムリボンについたプンターレ付ベルトも、これから各国で売れると思っています。

  現在課題となるようなことはありますか?

  マテリアルの手配です。
今レザーなどのマテリアルの確保が世界的に難しくなっています。
アンダーソンズのクオリティに見合うようなレザーを確保するために、当社では一年半前からサプライヤーにオーダーしています。
ベルトは生活の中で最もテンションのかかるアイテムなのです。
コーディネートの中で重要なアイテムというと、靴などを思い浮かべがちかもしれませんが、ベルトは立ったり座ったり、汗をかいたりと様々なことが影響するので、そのクオリティはよく吟味すべきアイテムです。
だからマテリアルも含め、こだわりを持って商品を作っています。

 

  ハンドメイドにこだわる理由を教えてください。

  ベルトは今では様々なショップで、様々な価格のベルトをチョイスできますが、私たちはハンドメイドにこだわります。
それは人の手を介さないとできない部分があるからです。
マシンを取り入れながらも、そこにはこだわっています。
手間をかけて作ったものは長く使えます。
ちなみに今日私がしているベルトはオーストラリア産のクロコダイルのベルトで、全くへたらないのでもう20年近く愛用しています。
また私たちは安い賃金を求めて海外に生産拠点を移すことをしません。
パルマの熟練の職人たちの手作業によって作られてこそ、アンダーソンズの製品なので、私たちはこれからも規模の追求は追わず、クオリティを落とさずにできることを行っていきます。
ベルトは単にパンツを腰にキープしておくツールではありません。
その生産地の歴史や文化、職人の思いや企業のこだわり、そしてそれを身に着ける人の価値観などいろんなものが詰まっています。
大切な方にプレゼントする時や、自分の価値観を大切にする方に、私たちアンダーソンズのベルトをチョイスしていただくこと、それが私たちにとってこの上のない喜びです。

  お話を伺い、アンダーソンズの哲学や製品に対するこだわりを改めて感じることが出来ました。
ありがとうございました。