古都フィレンツェで日本人が作る孤高のハンドソーン靴として、そのエレガントなスタイルが人気を博しているのが靴職人、深谷秀隆氏。
工房の名は日本語で「子猫」を意味する「イルミーチョ」。
猫の自由で気ままな性格に深谷氏自身を投影したことに端を発する。
今年でフィレンツェ在住11年を迎える深谷氏は、元々は服飾デザイナーとして活躍していたが、「洋服はミシン一台さえあれば作れる人はたくさんいる。どうせやるならば誰にも出来ない事をやろう」と考え、レザーが好きだったこともあり靴職人になることを決意。
1999年、単身イタリアのフィレンツェに渡欧。
フィレンツェから南に80キロほどのシエナという街で靴の工房に入門し、約2年間修業。
その後、独立を目的にフィレンツェに戻り、知り合いの工房を手伝いながら自身の靴の制作を行なっていたという。
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制作は木型から底付けまで全て深谷氏自身の手によって行なわれる。
ベースとなる木型はスクエアとラウンドのシンプルな2タイプ。
「あとはお客様の足の形やどういった靴が好みかによって変化する。」
価格は3000ユーロから。
決して安くは無いその靴にイタリア、フランス、日本、中国など世界中から注文が集まる。
「週に一足作るのが一応自分で決めたノルマ。急いでも良いものは作れないし、それに僕の仕事は徹底的に良い靴を作らないと意味が無いので、命を掛けて作っています。」と研ぎ澄まされた鋭い視線で、深谷氏は遠慮がちに、しかし自身の熱い思いを言葉の節々に込める。
使う素材はアッパーはイギリス製、芯材と底材はドイツ製のもの。
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イルミーチョの店内には客用のイスとテーブル、カウンターとサンプルのシューズが整然と並ぶディスプレイ棚があるだけのシンプルな作り。
深谷氏のセンスの良さが滲み出ている。
その奥に深谷氏の工房があり、木型や工具、サンプル段階の靴が整然と並ぶ。
そこで作られる靴はロングノーズのスクエアトゥで、インサイドはぎりぎりまで攻めたロール状に丸みのあるベヴェルドウエストが特徴的。
甲は低く押さえられ、コバの張り出しも殆ど無い。
ス・ミズーラのディティールがふんだんに盛り込まれ、かつ圧倒的なオーラと繊細な雰囲気を醸し出す氏の靴は、深谷氏の類まれなる才能とこれまでのイタリアで培ってきた経験が如何に人並み外れたものであるかが分かる。 |
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